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好きな人も自分が好き、そんな二重の偶然はレアじゃないが誰でもあえるほどコモンではない。この世の中には好かれない人に惚れた、好きじゃない人に惚れられた、そういう場合の方が多いなの。追い続けても絶対手に入れないものより、伸ばせば届ける代わりで満足する?あたしはね......

新光暦238年 
アークスシップ9番艦 ハガル

あたしは勝手にお姉ちゃんのことが好きになって、勝手にお姉ちゃんのために生きようと思ったけど、お姉ちゃんはあたしに同じ目で見てるわけではなかった、むしろあたしが迷惑だったかも。

実力はあるとはいえ駆け出しアークスのあたしよりはお姉ちゃんの方が大先輩で当然受ける依頼はお姉ちゃんの方が多い。戦闘だけに限らず船上もたくさんの仕事があってなかなか休まないらしい、毎日毎日会いたかったけどお姉ちゃん忙しいなので邪魔にならないようわがままを我慢して待ってた。

でも、お姉ちゃんの求めてる人はあたしじゃない、最初から最後までもあたしじゃなかった。

運転したほどパーツが壊れやすいみたいに人間も頑張ったほど疲れる、だから自分の悩みや痛みがわかってくれる人が欲しい。お姉ちゃんにとって祇園さんが一番だった。二人の関係はよく知りませんがあたしから見ると長い付き合いで誰がお姉ちゃんの日々な疲れから癒せるというなら祇園さんはあたしよりも上手でした。邪魔してはいけないのであたしは遠くから見てた、ただ見るほど胸に変な気持ちが沸き上がった、モヤモヤする。嫌いではないのに少しだけ祇園さんをお姉ちゃんから離してほしい。

そう、その感情はみんなが言ってる「嫉妬」だ。始まる時は気づかない微弱だったが、確かに少しずつあたしを奈落の底へ誘う。そして、負の感情に流された一方のあたしを引き止めとしたある男が現れた。

あの日もお姉ちゃんがいない日でした、あたしはテレポーターピラー(ゲートエリアにあるあれ)の上に座ってアークスたちを観察していた。面白いやつが多くてなかなかいい暇つぶしになった。

ゆい「ねぇ、みおり~ あたしがどうすればあっちのカップルみたいにお姉ちゃんとラブラブできるのかな?」

どうしても寂しさを我慢できなくて、あたしはイチャ付いてるネコ耳メイドとブラックコート少年の若い恋人を指してマグに問った。これもまたあたしの些細な「嫉妬」なの。

ミオリ「?」

もちろん戦闘補助用のマグじゃ難しい質問に答えない、そもそも理解できないだろう。

ゆい「まあね、あんたに聞いても無駄だもんね。帰ろうかー」

???「こんばんは」

ゆい「ふえええ?!」

声かけられるのは別に驚くことではないがこの人を見たらあたしはびっくりしました。さっきまであたしの観察対象になったイチャイチャ男はいつの間に背後に回り込んだ。

ゆい「あの、人間違いじゃないかな?」

???「いや、ゆいちゃんと会いに来たよ、さっきまでオレを見てたよね?」

え、なにいってるのこの人は、初めてなのにあたしのことが知ってる風に言っている。

ゆい「あたしに?」

???「うん、どっか楽しいどころにいかない?」

なんだ、ただのナンパじゃないです、焦ったの。ふつうは名前も知らない相手の誘いに乗るわけがないだけど、どうせ今日もお姉ちゃんと会えないし、一日だけは問題ないよね。変なことされるそうだったら逃げれば大丈夫。

ゆい「うん、いいよ、今日だけなら」

待ってよ、あたしは一体なにをしているの?はぁ、寂しすぎて頭が壊れたでも?

???「じゃいこうか」

ゆい「ちょ、ちょっとまって!」

許可がもらえた彼はすぐあたしの手を引き連れ出そうとした。口では許したとはいえ名前すらしらない男にはやはりまだ抵抗がある、本能反射で拒絶した。

???「どうした?やっぱりいやか?」

ゆい「そうじゃないの!えっと、名前教えてくれないかなと思って」

???「まだ教えてないだっけ。俺、けんやっていうんだ、よろしくな、ゆい」

ゆい「けんや......うん、覚えた!よろしくね」

これが、あたしと彼の出会い

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おひさにお姉ちゃんと会えて、一夜部屋の中でうろうろ眠れなかった。でもこれはうれしすぎなんでもない、逆に怯えてるんだ。

「唯のこと怖がってるんだ」

「そっとしておいてほしい」

お姉ちゃんの言葉は頭の中に響き回ってる、どうしても忘れられない。

一番傷付けたくない、一番守ろうとしていた人の口から一番言われたくない言葉で言われた。鋭い剣のようにあたしの心に刺し、貫いた。あたしはお姉ちゃんにひどいことをしちゃった、しかも一二回だけではなく今日言われるまで気づけず繰り返した、妹失格だよ。

嫌われてもしょうがない、あたしの受けるべき罰なんだから。うん、仕方ないことだからあたしは大丈夫だよ、平気で受け入れる。別れなんでもう慣れたじゃないですか?一人ぼっちも慣れたよ。だから大丈夫!

あたしは大丈夫だよ。

あたし大丈夫だよ。大丈夫だよ。

大丈夫だよ。大丈夫だよ。大丈夫だよ。大丈夫だよ。大丈夫だよ。大丈夫だよ。

......

そんなわけがない!

ナイフ先が喉に届いた痛覚にほんのすこし理性を取り戻させられた。滴る鮮血は真っ白なベッドシーツを染めてゆく、臆病と後悔の色に。そう、あたしはお姉ちゃん抜きで生けられる勇気がない、同時に自分の手で死ぬ勇気もないのだ。

はあ、あたしは一体なにをしてるんだろう......誰か、助けて


結局握られたナイフは夜明けになっても1mmすら進まなかった。月さまだけ彷徨う少女を見守った。

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けんや「ゆい?どうしたの、ぼーっとしてって」

ゆい「ごめんごめん、ちょっと考え事ってね」

けんや「まったく、ゆいはたまにデート中でもぼーっとするタイプ?」

今夜は無月の夜、背後のファミレスの灯りに頼ってぎりぎりけんやの顔が見える。あれからは何度デートしたけど今みたいけんやの顔がこんなに頼れる魅力的な男とは見えなかった。

ゆい「む~」

けんや「わ、わかってるから。今日もこの辺で解散かな?」

遊びは遊んだ、食事は食べた、ふつうはこれでそれぞれ戻るべき場所に帰るのだ。あたしにはまたそういう居場所あるのか?

ゆい「その......今日だけ部屋まで付き合ってくれない、かな?今日だけで、いいから」

けんや「襲われるぞ」

ゆい「うん、それでもいいの、一人にしないで」

普段のあたしは決して男を部屋に入らせないというのに、今は自分から誘った。今晩も独りぼっちだったら、またなにをするかもしれない。もちろん彼を部屋に連れ込む意味ははっきり分かっている、あたしはバカだけどそれほどバカじゃない。リスク承知の上で覚悟を決めたから。

けんや「んじゃいこう」

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部屋の前にあたしは立ち止まった、なぜかいまさらまだ躊躇する。あたしのやってることは正しいのか自分自身も疑っちゃう。口はお姉ちゃんが好きとか言いながら男を誘い込むなんでホントにいいの?

けんや「着いてだし、俺は先に帰るね」

ゆい「待って!」

焦った、けんやの後ろ姿をわずかな一瞬だけお姉ちゃんと重ねた。思わず彼の袖を引き止めた。けんやとお姉ちゃんは全然違うタイプ、丸と三角みたい共通点ゼロのにどうして重ねただろう。

ゆい「行かないで、今日は一緒に居て欲しい」

ああ、言っちゃた。これじゃもう後戻りはないよね。きっとそういう女の子と思われるよ。

けんや「今日のゆいは積極だね、いいよ」

こうして、あたしたちの関係は歪んで始めた。

ゆい「お、お茶でいいよね?淹れてくるね」

けんや「それよりすることあるやろ?」

ゆい「きゃー!」

彼に手が掴まられてベッドの上に押し倒された。誘った時から予想したがけんやがそう急するのが思えなかった、あたしは男の欲望を増幅する可愛らしい悲鳴を本能で上げた。

けんや「大好きだよ、ゆい」

ゆい「あたしも、すき」

けんや「じゃあいいよね?」

けんやの「大好き」に、あたしは同等の「大好き」で返さない。その中の意味にけんやは気付いてないらしい、あたしはすごい罪悪感を覚えた。

ゆい「ま、待ってよ!」

けんや「なにかだめなの?」

ゆい「あたしのどこがすきのか、知りたいの」

ここまで来てどう抗っても無駄な時間稼ぎだと十分わかっている、でもこれは本気で聞きたいことだから。

けんや「胸が大きいかな」

ゆい「スケベ∼ 他はないの?」

けんや「顔が好き、声が好き、目が好き、髪が好き、ダメ?」

ゆい「ダメじゃ、ないだけど......」

はずかしい、あたしの顔は絶対赤いだよ。外在なあたしだけと言ってもけんやは本気であたしのことが好きなんだ、ちゃんと言い出さないと。そう、けんやを傷付く前にホントなあたしを教えないと。また同じ罪を犯したくないんだ。

ゆい「あたしはけんやの思ってるような人じゃないと思う」

けんや「え?どういうこと?」

どうやってふつうにお姉ちゃんをひどく傷付いた経緯をあたしの知っている限り隠せず全部教えた。もちろんすべてはあたし視点でお姉ちゃんがどう思ってたのかは含めてない。お姉ちゃんは一体なにを怖がったのか、なぜ怖がったのか、あたしは今でもわからない、そしてたぶん一生理解出来ないと思う。

お姉ちゃんが伝うとしたこともあたしの伝うとしたことも、伝うべき言葉の意味どっちも届かなかった、あたしはお姉ちゃんとすれ違った。

けんや「それで?」

ゆい「え?でも、ほら、あたしってふつうに人を傷付くよ」

けんや「ゆいはわざとじゃないでしょう?だったらゆいのせいじゃなくて不幸な事故だけよ」

ゆい「でも!あたしはけんやのことをお姉ちゃんの代わりにしてるよ!セックスじゃないよ、ただあたしの贅沢なオナニーだけだよ?」

あたしはホント最低な人なんだ。人の好意を心の穴を埋まる道具に使うくずなあたしに彼は好きって言った。

けんや「ちゅ」

ゆい「ん......くちゅ......急にキスしないでよ」

強引にキスされたのにあたしは意外に嫌じゃなかった。軽く唇が重ねられて、舌が入ってくる。無理やり侵入してきてあたしの舌と絡まる。深く求めながらも力を入り過ぎはない優しく動いた。

けんや「どうだっていいのそんなの。俺はゆいが好き、これだけが重要だ」

ゆい「あたしは独占欲すごいよ、すぐ嫉妬しちゃうよ?」

けんや「好きだから嫉妬やろう、好きよ」

ゆい「めんどくさいかまってちゃんだよ?」

けんや「甘えん坊のどころも好き」

ゆい「いつでも前向きにならないメンヘラだよ?」

けんや「好きよ、ゆいの全部が好き」

ゆい「バカ!バカ......セックスのことしか考えてないのに」

けんや「かもな、だが本気で愛してる」

なんでだろう?ただ好きという二文字を繰り返すしかない下手な言葉遣いにあたしは感動した。お姉ちゃんがあたしのすべて、このことは変わっていない。じゃこの胸騒ぎ、ドキドキはなに?

ゆい「うん、ありがとう。愛してる、よ」

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こうして、あたしたちはその禁忌な一線を越え、あたしはホントの意味で女となった。

雑ざり合う白濁と血、中に泳ぐ熱い種、「なか」に残留する快感、満たされた充実感、部屋にたちこめたいやらしいな匂い、これら全部があたしに刹那だけ莫大な快楽を与えた、人をダメにするとてもとても危険な快楽。

淫らな行為の後にあたしは改めてあの揺るがない事実に意識した。

初体験ホントに気持ちよかった、堕落しちゃいそうほどすごかった。あたしは処女だとわかって、痛くなくなるまでけんやは動けず愛撫でリラックスにしてくれた。時に優しい、時に激しい、出たり入ったり毎回もあたしの一番敏感なスポットに当たる。なぜセックス中毒する人の気持ちはほんの少しだけ理解できる気がする。世のすべてが無関係になって、この空間、この時間にある快感こそがすべてだと、ホントに気持ちよかった。

そう、気持ちよかった。でもどこが間違った気がする

瞬間だけの充実感が消え去った後、次に襲ってくるのはそれ以上の空洞感。たしかに性行為は悩みを忘れさせる不思議な力が秘めている、だがそれで問題は解決したわけがない。ただ途中に思考する余力がないだけだ、状況はまったく改善していない。やっと認識した失望と過ぎた快楽の差はもとより深い穴を掘ってしまう。今でもお姉ちゃんを失ていく、なにも進んでいない。

わかってもあたしはやめられない、刹那だけの救いでも強く求めて、あれからも何度も何度も旦那と体を重ねた。性行為に麻薬のよう依存して悩み事を追い払っていた。旦那と同じベッドで添い寝すると落ち着いて眠れる。暖かい腕に抱かれると罪はほんのすこしだけ贖われた気がする。死ぬべきのにまだ生きている汚い私でもね。

そして例の作戦は発令され、あたしはあれから旦那と会えなかった。

クエスト11.5 END


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読んでくれてありがとう!今回は自信作ですよ
最終修正でちょっと伸びたので元のバージョンとちょっと違うのです
いわば仕上げってやつだね、今の方がぴったりだと思うので!
次回は説明回です、スキップしてもいいけど読んだ方が理解しやすいと思う
13話からこそ本番だ、やっと終わりに近づいたのね
ゆいちゃん今まで通り最後までもたまに顔出すよ、だから応援よろしくね
ゆいにゃんはそのうち戻るわ、一応主役だものw

そして今回も淡井さんのすばらしい絵でした~
ちゃんと服着てるのにエロ雰囲気満々のゆいちゃんが好きなの
淡井さんの応援もよろね、なんといってもわたしより才能ある人から

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